お知らせ
Vol.17(2020/12/25)日本の最新動向/高齢者クラスター/最新ワクチン動向(ファイザー・モデルナ、日本)/英国で発生したウイルスの変異種/子どもたちが描いたコロナウイルスほか
新規陽性者数の増加に歯止めがかからないまま年の瀬を迎えようとしていますが、アメリカやヨーロッパでは既にワクチン接種が開始しており人々の希望になっています。2021年前半には日本でもワクチン接種が始まる見込みのようですが、それまでは従来通り、一人ひとりが感染予防を意識するほかありません。
今号では、感染状況の最新動向に加えて、ワクチンの効果や副作用などのレポート、9月下旬以降の英国で感染拡大につながった変異ウイルスなどについて取り上げています。
最後に、2021年に私達の生活がどうなっていくのかいまだ不透明ではありますが、今年一年の疲れを癒し、穏やかな新年を迎えられますようお祈り申し上げます。
[1]当クリニックの抗体陽性者について
当クリニックでは発熱や咳などの症状がない(過去2週間以内にもなかった)方を対象に実施しておりますが、11月15日から12月14日までのコロナ抗体陽性率は2.66%(11/413)でした。
今後の1か月の陽性率が気になります。
(図1)当クリニックでの抗体検査の推移
[2]日本の感染者動向
日本の現状は皆様がニュースで聞かれるとおり、急速に増えています。年末年始は特に気を付ける必要があります。
(図2)陽性者数
(図3)入院治療等を要する者の数
(図4)死亡者数(累計)
(図5)重症者数
出所:厚生労働省「データからわかる-新型コロナウイルス感染症情報-」2020/12/24時点
https://covid19.mhlw.go.jp/
[3]高齢者クラスターによる死亡率の上昇
高齢者のクラスターが死亡率を上昇させます。感染者数が少ないはずの岩手県が死亡率トップになってしまいました。
【岩手】死亡率5・37%全国最悪 死者18人:病院クラスター多発で
県と盛岡市は20日、新型コロナウイルスの感染者2人が死亡し、新たに5人の感染が確認されたと発表した。累計で県内の死者は18人、感染者は335人となった。感染者に対する死者の発生率は5・37%となり、読売新聞のまとめでは20日午後8時現在、都道府県別で最も高い。
死者発生率が高い背景には、高齢者の利用が多い病院でクラスター(感染集団)が続出したことが挙げられる。発生率が次に高いのは富山県の5・26%(26人)。東北の2番目は青森県の1・54%(6人)。東京都は1・10%(566人)。
20日に発表された県内の死者2人は、いずれも65歳以上の高齢者で、基礎疾患があった。県医療政策室は「高齢者や基礎疾患を持つ人が多い医療機関にウイルスが侵入すると非常に深刻な事態になる。ウイルスを持ち込まないことを、特に若い人は意識してもらいたい」と呼びかけている。出所:2020年12月21日 (月)読売新聞「コロナ『死亡率』5・37%、全国で最も高いのは岩手県」
https://www.yomiuri.co.jp/national/20201221-OYT1T50088/
[4]ワクチン最新動向1:ファイザー、モデルナ
ファイザーワクチンとモデルナワクチンが使用され始めました。
FDAの情報によると、下記の2つの図(ワクチンを接種してから感染者数を調べたグラフ)のように、どちらのワクチンともに最初の2週間(ワクチン接種後に抗体ができるまでの期間)はワクチンを打った人にも感染者が出ましたが、2週間以降は新規感染者がほぼ全く出ていません。つまり今までに無いほど有効性が高いワクチンと言えます。
●ファイザー
赤い増加している線は偽薬(ワクチンでない注射)で、青く増加しない線が本物のワクチンです。
(図6)COVID-19発生の累積発生率曲線(ファイザー)
出所:Emergency Use Authorization for Pfizer-BioNTech COVID-19 Vaccine Review Memo (fda.gov)
https://www.fda.gov/media/144416/download
●モデルナ
こちらは図6と逆で、青い増加している線は偽薬(ワクチンでない注射)で、赤く増加しない線が本物のワクチンです。
(図7)COVID-19発生の累積発生率曲線(モデルナ)
出所:Vaccines and Related Biological Products Advisory Committee December 17, 2020 Meeting Briefing Document – FDA
https://www.fda.gov/media/144434/download
[5]ワクチン最新動向2:ワクチンの副作用について
ファイザーのワクチンで重篤なアナフィラキシーショックが数名に出現したと報道がありました。
インフルエンザワクチンを含めて、アナフィラキシーなどの反応は知られています。そのために問診票には必ず、過去のアレルギー反応に関して聞く項目があります。
過去に強いアレルギー反応を示した人は、一般的に言って接種を控えるのが良いかもしれません。
上記のファイザーワクチンのサイトには治験中の重症の副作用(発赤、発熱、痛み、腫脹から神経所見まで)の発生頻度が記載されています。
16歳から55歳: ワクチン群 0.4% 偽薬群 0.3%
56歳以上: ワクチン群 0.8% 偽薬群 0.6%
でした。
[6]ワクチン最新動向3:日本に入ってくるのはいつでしょう?
NHKニュースを引用します。
2月中に、コロナ対応をしている病院の医療関係者から接種が開始されるかもしれません。
(図8)承認スケジュール見込み(NHK)
出所:2020/12/18 NHKニュース「ファイザー コロナワクチン 日本で承認申請 早ければ2月に結論」
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20201218/k10012770781000.html
●世界のワクチン接種と集団免疫獲得の予想タイムテーブルが出ています。
下記のように、米国や英国は2021年半ばには集団免疫獲得の予測があります。
日本は2022年4月ごろの様です。
(図9)集団免疫獲得までのタイムライン予測資料(airfinity社)
出所:Airfinity:Snapshot COVID-19 data
https://www.ifpma.org/wp-content/uploads/2020/12/Airfinity_Slides_Final.pdf
[7]英国で変異型ウイルスが出ました。
もともとコロナウイルスは1か月以内に1回は変異するものですので、びっくりするようなことではありません。9月からこの変異ウイルスが英国で増加し、最近は2/3以上になっているそうです。(オレンジ色)
(図10)変異型ウイルスの割合
出所:https://twitter.com/The_Soup_Dragon/status/1340349639946629120/photo/1
英国全体をサーベイしている公式サイトでは、9月以降に急速に検出されるようになったグラフ上方のグループが、この新しい変異ウイルスを示しています。
(図11)英国で発見された変異ウイルスと、これまでに世界で発見されてきたウイルスの違い
出所:Preliminary genomic characterisation of an emergent SARS-CoV-2 lineage in the UK defined by a novel set of spike mutations – SARS-CoV-2 coronavirus / nCoV-2019 Genomic Epidemiology – Virological
https://virological.org/t/preliminary-genomic-characterisation-of-an-emergent-sars-cov-2-lineage-in-the-uk-defined-by-a-novel-set-of-spike-mutations/563
この件について、12/16に公開された論文では下記のように説明されています。
COG-UK所長シャロン・ピーコック氏はサイエンスメディアセンターの記者会見で、 「変異が起こることは予測済みである。それがウイルスの進化として自然なことだ。すでに数千種の変異が起きているが、ウイルスの性質を大きく変えた変異は見つかっていない。しかし、新たなアウトブレイクが発生したときに、どの変異株が関与しているかを速やかにつかむうえで重要だ」と述べた。
この変異株は今までのウイルスよりも危険なのか?
「まだそれはわからない。感染力が強くなると、病原性も必ず強くなると考える必要はない。すでにイギリス国内では数多くの変異株が発見されているが、例えば、D614G変異株は、感染力が強いと考えられ、事実、現在イギリス国内で流行している新型コロナウイルスはほとんどこの株になっている。しかし初期の流行株よりも病原性が強いとは考えられていない。」
この変異ウイルスにワクチンは効くのか?
「この株は、先行承認された3種のワクチンがターゲットとしているスパイク蛋白に変異を起こしている。
しかし、これらのワクチンは、スパイク蛋白の様々な部位に反応して抗体を作り出す機能を持っている。したがって、一か所だけが変異しても、ワクチン効果が低下することは考えにくい。今後変異個所が増えるならば、ワクチンデザインの修正が必要となるかもしれない。このような変異は、季節性インフルエンザでは毎年普通に起きていることだ。」
「新型コロナウイルスはインフルエンザウイルスほど速く変異していない。今回のトライアルで今までの新型コロナウイルスに有効性が確認されたワクチンは、そのような変異に簡単に対応できるデザインとなっている。」
出所:The BMJ:Covid-19: New coronavirus variant is identified in UK
https://www.bmj.com/content/371/bmj.m4857
※本項と次項の情報提供元:道北勤医協旭川北医院 松崎道幸先生
[8]クリスマスによせて:子どもたちが描いた「コロナウイルス」
今年、感染症対策として、世界のあちらこちらで、学校に通えない期間がありました。フランスの小児科医らが、精神科医、心理学者との議論を経て、子どもたちにコロナウイルスの絵を描いてもらったそうです。
「彼らの絵は、これまでに数えきれないほど報道されたあのウイルスの画像に沿って描かれていた。丸い形、キノコ型の突起、カラフル、一個だけあるいは何個も、にこにこしたり、悲しげだったり、しかし、邪悪な顔つきのものはほとんどなかった。もっとも蛇頭の髪の毛を持つ女神風のものもあるが」
子供の絵は天才的です。
(絵)20人の子供たちが描いた、何も見ないで自分でイメージしたコロナウイルス
出所:The BMJ:To each child their own coronavirus.
https://www.bmj.com/content/371/bmj.m4578
※当ページの内容は「2020年12月25日」時点の情報です。