医療・健康コラム

Vol.2(2020/4/6)日本の状況/免疫力アップ5ヶ条/BCG予防接種/ほか

東京都の新規感染者人数が毎日増えつつある中、日本医師会は4月1日「医療危機的状況宣言」と題する文書を発表しました。同じ4月1日には政府の専門家会議も「都市部を中心に感染者が急増し、医療供給体制が逼迫しつつある地域が出てきている」と分析し、一般市民に「三つの密」を避ける行動を徹底するよう求めています。

日本の今の取り組みで終息に向かうことを願いつつも、本日は、次の2点をお伝えします。

  • i.日本は、爆発的な感染者増加の可能性すらある、危機的な状況にあること
  • ii.この危機的状況の中で、いま私たちができること(免疫力アップ5ヶ条、腸活)

日々刻刻と状況が変わります。皆様もニュースなどにもよく気を付けて、充分以上の自制心をもって行動してください。いまは「備えあれば患いなし」です。

[1] 日本の状況:
予断を許しません。爆発的な感染者増加を示唆する研究者も。

現在の状況は「瀬戸際」と表現されることが多いですが、横浜市立大学生命ナノシステム科学研究科佐藤彰洋特任教授は、更に踏み込んで、一刻も早い、大胆な移動制限(社会的距離戦略)を提言しています。

COVID-19(新型肺炎)の感染拡大抑制に関する研究・検討資料内容を共有するページから抜粋引用します。

出所:https://www.fttsus.jp/covinfo/

2020年3月10日からそれ以前(2020年3月9日まで)と比較して10倍の感染率でCOVID-19の感染連鎖が発生していると仮定すると、ここ数日の東京都内における感染者確認数の急上昇が説明することができます。

(中略)

この10倍の感染率が2020年3月10日以降で確認される理由としては、海外からの帰国者が持ち込んだ欧州で流行を広げている感染力の強い、これまで日本国内で主として確認されていたウイルスと異なる種の2次感染、3次感染が発生していると考えるべきです。いわゆる「第2波」と呼ばれる現象です。

これはあくまでも仮説です。ただ、佐藤教授は、新型コロナウイルス感染の爆発的な拡大を防ぐためには、ヒトとの接触頻度を本当に必要最小限レベルに留めるべき(社会的距離戦略)、と主張します。

20200403_01.png

▲何もしなかった場合、感染者数は急増する

20200403_02.png

▲接触頻度を究極的に減らした場合、
2週後から感染者の増加が減る

全国的に見ますと、感染者数が3,000人~5,000人を超えた当たりで医療と隔離の容量を超過した段階で一気に現在の感染率が上昇し、この爆発的感染拡大が始まります。
「ウイルスを消滅させるか我々がウイルスに消滅させられるかの二者択一の問題であり、その意思決定は、我々がこの2週間の行動をどうするかで全て決まる」 ということを強く主張させて頂きたい。

爆発的増加が起こってからは、もう事態を止められない。そういう危機感を佐藤教授は訴えています。

coffee.png【コーヒーブレイク】

小説家・辻 仁成さんが、ロックダウンの始まったフランスから、今の日本を見て思うことを、ブログに綴っています。今できることは、未来に起こるかもしれない危機に対して正しく備えること。そう思います。是非ご一読ください。

◆滞仏日記「だれのためのロックダウンだよ」2020/03/27
https://www.designstoriesinc.com/jinsei/daily-486/

[2] 免疫学の第一人者が指摘する「人間の免疫システムのすごさ」

予断を許さない状況の中で、自分の身を守るために出来ることは何か。免疫学の第一人者である大阪大学免疫学フロンティア研究センターの宮坂昌之先生の助言は分かりやすい。

出所:ヤフーニュースより抜粋:在英ジャーナリスト木村正人氏との対談
https://news.yahoo.co.jp/byline/kimuramasato/20200322-00169018/
大阪大学免疫学フロンティア研究センター招へい教授:宮坂昌之 先生

◆普段から抵抗力、免疫力を高めるためには?(免疫力アップ5ヶ条)
  1. (1)「まずは、ウイルスがいそうな場所には行かないことです。つまり、密集した場所、密閉空間、他人との近接距離を避けることが大事です」
  2. (2)「次に、体内時計を狂わさないこと、つまり、生活リズムを守ることです。というのは、体を守る免疫反応だけでなく、食べる、消化すること、眠ること、すべてが体内時計によって支配されているからです。ですから、体内時計を狂わさないことが大事なのです」
    「たとえば、朝早く起きて朝陽を浴びながら散歩をすると、体内時計がうまく動き始めます。夜、決まった時間に寝るとさらに体内時計がうまく動くようになります」
  3. (3)「それから、積極的に体を動かすことも大事です。リンパ球などの免疫細胞は血液やリンパ液に乗って体内をパトロールし、異物を見つけ、排除しようとします。体を動かすと血流、リンパ流が良くなるので、免疫力を維持できるのです」
  4. (4)「食べ物も大事。程よい量で、バランスの良い食事をすることが大事です」
  5. (5)「最後にストレスを避けることです。ストレスにより副腎からコルチゾールというホルモンが作られ、これにより免疫細胞の機能が低下します。ストレスのある時に風邪を引いたり、ヘルペスになるのは、このためです」

三つの密を避ける(1)は最近よく報道される通りですが、
規則正しい生活習慣(2)(3)(4)も免疫力を高めることに効果があります。自分の身を自分で守るために、出来ることから始めていきたいものです。

この他にも、宮坂先生は、人口約1000万人の武漢で感染者は公称10万人程度にとどまった背景に、ヒトが持つ「自然免疫機能」や「交叉免疫」の可能性を示唆しています。

「コロナウイルスに関する限り、交叉免疫ということが起こる可能性があり、抗体も大事ですが、ウイルス感染細胞を殺せるTリンパ球ができてくるか、そしてそれがどのぐらい体内で生き延びるか、ということも、同様に重要かもしれません」

[3] BCGが少しだけ役に立っているかも?これも免疫増強効果?

Webニュースをご覧になって、当クリニックにも「BCG接種出来ますか」と問い合わせを頂いていますが、海外の研究では、BCG予防接種が新型コロナウイルスへの抵抗力をアップさせる可能性が示唆されています。
下記の記事は各種ブログなどを参照にまとめました。

https://www.researchgate.net/figure/Map-displaying-BCG-vaccination-policy-by-country-A-The-country-currently-has-universal_fig2_50892386

◆BCGの接種状況と、新型コロナウイルスの死亡率には相関性がある?

20200403_03.png

▲BCGの接種状況

20200403_04.png

▲BCG接種率と死亡率の相関関係

【左の世界地図の解説】
  • A(肌色)は全員にBCGを接種している国です。アジア・アフリカ・中南米はそうです。
  • B(紫色)はかつてBCGを接種するも現在はやめた国です。
  • ちなみにスペインは1981年に中止、ドイツは1998年に中止、英国・フランスは2005-2007に中止しています。
  • C(茶色)はBCG接種プログラムがありません。
【右のグラフの解説】

左の2群はBCG接種国、右の1群はBCG未接種国です。BCG未接種国の人口当たりの死亡率が高くなっています。

詳細は割愛しますが、ロシアや日本は、BCGワクチンに使用するタイプが歴史的に最も古いタイプで、どうもコロナ対策には一番有効かもしれないと言われています。

しかし、その日本やロシアでも、今や発症数が増えてきています。その原因としてはやはり感染自体の拡大でしょうが、BCGの観点からは

  • 1.日本では1951年以前(70歳以上)の人はBCG接種が義務化されていない
  • 2.接種率の問題。2015年の日本のBCG接種率は80%前後です。
  • 3.接種しても反応が弱い人がいる

ということが考えられます。

◆BCGを接種すると、どうなるの?

さてBCGワクチンはどのように免疫系、抗ウイルス作用を持ちうるのでしょうか?論文があります。

BCG Vaccination Protects against Experimental Viral Infection in Humans through the Induction of Cytokines Associated with Trained Immunity. Cell Host & Microbe, 2018

結論は、BGCワクチンを接種すると、白血球・免疫細胞系の単球という細胞の遺伝子スイッチが入り、IL-1βなどという代表的な抗ウイルスサイトカインが増え、図では血中の黄熱ウイルスが減り、黄熱発症が抑制されると説明されています。つまりBCGは単球系の自然免疫を増強している可能性があります。

20200403_08.png

このような結果を受けて、ドイツ、オランダ、オーストラリアでBCG接種治験が始まっています。

Can a century-old TB vaccine steel the immune system against the new coronavirus? Science, 2020
Immune boost against the corona virusIn Germany, a vaccine candidate will be tested for its effectiveness against infections with the novel corona virusAustralia Enters 4,000 Healthcare Workers in Trial for Coronavirus Vaccine

日本でも、東北大学でのある研究から考えると、

  1. 1.ツベルクリン反応をチェックして陽性なら問題なしと考える
  2. 2.陰性ならBCGを接種する

という方法であれば、今回のCOVID 19に応用しても良いかもしれません。
出所:http://altmetrics.ceek.jp/article/kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-15590794/

[4] 今できること:「腸管免疫について」古川 真依子 先生

新型コロナウイルスの感染者増加は当分止まらない可能性を考慮すると、私たちに出来ることは、自らの免疫機能を高めて、維持することです。最後に、当クリニックの古川先生が免疫力向上のための「腸活」をご紹介します。

2019/8/13医師が教える正しい「腸活」のすすめhttps://www.ilacy.jp/maiko/post_190813.html

「腸には小腸と大腸があって、大まかにいうと小腸は栄養分を吸収するところ、大腸はいらなくなった物を便として出すところになります。また、腸には「腸管免疫」というシステムがあり、ウイルスや細菌から体を守る役割を果たしています。つまり、腸内環境が悪化すると免疫力が低下し、風邪をはじめ、さまざまな病気にかかりやすくなると考えられます。便通を整えるよう、普段からの食生活を注意し、腸内環境を意識することで健康を維持していきましょう。」

※当ページの内容は「2020年4月6日」時点の情報です。