動脈硬化、さらには心筋梗塞や脳卒中を引き起こす可能性あがある「メタボリック症候群」。正しい対策は、正しい知識から。これまで信じていた常識は、間違っているかもしれません。
監修:渡邊 美和子 医師
■常識1:やせていればメタボとは無縁だ =X
メタボリック症候群とは、腹囲が男性で85cm以上、女性で90cm以上であることに加え、脂質異常、高血糖、高血圧の3つのうち2つ以上に該当する場合を言います。
男性の腹囲85cmというのは中高年のほぼ平均値ですから、それほど太って見えないのにメタボなことも。血液検査を見れば、メタボかどうか判断できます。
■常識2:メタボは中高年男性の問題だ =X
女性もメタボと診断されることがありますし、最近は20代で異常値が出る人が珍しくありません。
血糖値が高いとかコレステロール値が高い人が20代でもたくさんいます。メタボは、年齢や性別を問わず注意するべきことなのです。
■常識3:肉を食べないとやせる =X
たんぱく質が不足すると筋肉が落ち、代謝も下がって太りやすい体に。もちろん食べ過ぎはよくありませんが、食べ方によってもまったく違ってきます。
ロースよりヒレにする、鶏肉は皮を取る、油を使って焼くのではなく網焼きにするといった工夫でカロリーを抑えましょう。
■常識4:食事の回数を減らせばやせる =X
お相撲さんの食事が1日2回なのは、空腹になると栄養の吸収がよくなるから。朝食をしっかり食べて、昼食、夕食と軽くしていくのが原則です。
ただし、いつも接待などで夕食が遅く朝の食欲が進まない人は、1日3食の習慣にこだわらずに、むしろ食べる内容や食べ方の工夫を中心としたアドバイスをするなど、その方のライフスタイルに合わせて調整します。
■常識5:炭水化物を抜けばやせる =X
経験的に、お米など炭水化物を減らすとやせやすいとは思います。ただ、代わりにたんぱく質を摂り過ぎると腎臓に負担がかかります。
やはりバランスが大事ですし、日本人はお米を食べてきた文化と歴史があり、食事には欠かせません。ですから、量を減らし、就寝前は食べないこと。
また、雑穀や玄米は結血糖の急激な上昇を抑えるだけでなく、ビタミン、ミネラル、食物繊維が豊富に含まれるためお勧めです。
■常識6:油は摂らないほうがいい =X
満足感が得られないためストレスがたまり、反動でたくさん食べてしまう可能性も。また、肌のつやが失われ、カサカサしてくるなどのデメリットもあります。
血流を促進したり炎症を抑えると言われるオメガ3(DHA、EPA、エゴマ油、亜麻仁油など)といった、体にいい油を摂ることをお勧めします。
■Dr.渡邊のスペシャルアドバイス 楽しみながら 「健康危機管理」
メタボ対策は、減塩、糖質制限、食物繊維の摂取、良質な油脂の選択が中心となりますが、継続が不可欠。ですから、楽しくできることが大切です。
たとえば、塩分を急に制限するのは辛いですから、だしの旨みや薬味、ハーブ、酢などを上手に活用しましょう。おいしくいただけますし、次第に味覚が鋭敏になって繊細な味わいを楽しめるようになります。
また、食物繊維を摂ると、血糖値の急激な上昇が防がれ、コレステロールの吸収もえられるため、雑穀米をお勧めしています。白米に混ぜるだけの簡単さですが、これをきっかけに意識が変わり、食材選びを楽しむようになる方も多いですね。
検査にメタボ系の異常値が出た場合には、「いきなり禁酒!」などの無理な課題は与えません。
まずは、毎日5合のお酒を4合にする、夜中の食事はせめて23時までなど、「このくらいならできそう」なことを実行していただきます。
1ヶ月後の再検査で少しでも数値が改善すれば、まずはOK。成果が数値に表れるとうれしいですから、さらに体にいいことをしたくなり、ほとんどの方が3か月くらいの過程で改善してゆきます。
東京ミッドタウンクリニックには経営者の方が多く来院されますが、会社では厳しくリスクヘッジをされているのに、かけがえのないご自分の健康には無頓着な方が多く見受けられます。
楽しく「健康危機管理」。それが私たちのモットーです。