医療・健康コラム
Vol.18(2021/1/27)当クリニックの抗体陽性者/日本と世界の最新動向/医療崩壊を防ぐために/PCR検査が陰性でも注意すべき場合/今ワクチンが必要な理由ほか
2度目の緊急事態宣言が発令されて2週間あまり。新規陽性者数の動向に変化の兆しが見受けられますが、全体としては、まだまだ警戒を緩めることはできません。これまで皆さんが継続してきた感染症予防策に限らず、自分自身の身体を守り、健康を維持するために、食事や運動などにも目を配り取り組んでいきたいものです。
新型コロナウイルス感染症が普通の風邪のようになるまでには10年かかるという調査結果も出てきています。
それまでの間、私たちが安心して暮らしていくためにはワクチン接種は欠かすことのできないものと考えます。
今号では、先行する海外事例から安全性や効果を取り上げた論文をご紹介しますが、現時点では安全性の問題は比較的少なく、1回の接種でも一定の効果が見られるようです。
今後も世界各地で進む様々な検証結果を引き続き注目していきます。
- 今回のトピックス
[1] 当クリニックの抗体陽性者について
当クリニックでは発熱や咳などの症状がない(過去2週間以内にもなかった)方を対象に実施しておりますが、2020年12月15日から2021年1月14日までのコロナ抗体陽性率は4.06%(13/320)でした。
やはり上昇傾向です。
20歳代30歳代の方はほとんど含みませんので、現実的な陽性率は5%以上ではないかと考えます。
東京都の人口は約1,400万人です。5%なら70万人です。
同時期の東京都のPCR陽性者は合計26,596人でした。今までの陽性者の合計は90,659 人です。
これから考えるとやはり、無症状のCOVID感染者が発表の8-10倍いてもおかしくありません。
抗体検査は感染症全体のモニタリングに適しています。
図1:当クリニックでの抗体検査の推移
[2] 日本の状況、世界の状況
1月26日時点のデータです。
日本の新規感染者数は高水準にありますが、ピークが見えた可能性も少しはありそうです。
図2:日別の新規感染者数(日本)
世界ではもしかしたら減ってきた兆しかあるかもと期待されています。
図3:日別の新規感染者数(世界)
出所:https://news.yahoo.co.jp/pages/article/20200207
ファイナンシャルタイムズから今までの新規死亡者のグラフです
米国、英国、欧州が多いことが分かります。
図4:累計死亡者数(世界)
新規発症者を米国、英国、日本で比較しました。対数グラフであることにご注意ください。
日本は2か国よりは少ないことが分かります。
図5:新規発症者数の比較:日米英
ではアジアではどうでしょうか?
日本は、韓国、中国、タイ、シンガポールよりはるかに多く、なんとインドに近づいてきているようにも見えます。
図6:新規発症者数の比較:アジア
出所:FINACIAL TIMES
Coronavirus tracker: the latest figures as countries fight Covid-19 resurgence | Free to read | Financial Times (ft.com)
[3] 東京ミッドタウクリニック院長 田口淳一からの提言「医療崩壊を防ぐために」
筆者より、「医療崩壊を防ぐために」ということで提言を述べさせていただきます。
医療崩壊は、新型コロナ感染症の対応が出来なくなることではなく、通常の医療や救急が受けられなくなることです。
すでに近隣の大きな病院より新規患者の外来中止の通達が来ています。
心筋梗塞、脳梗塞や外傷などの救急でも、最新の医療が提供できない中小の病院に搬送され始めています。治療成績は最善のものではないかもしれません。
このような時こそ、あなたの身は、あなた自身で予防する必要があります。そのためには
- 1.高血圧症や糖尿病などの持病の治療はしっかりしましょう。特に血圧を服薬でしっかりコントロールすることで、心臓脳血管疾患、心不全などをかなり予防できるようになります。
- 2.塩分、アルコールなどを控えて、禁煙しましょう。食事はバランスよく、規則正しく。
- 3.適度な運動と、十分な睡眠を。ロックダウン下の国でも、外のランニングは認められています。
- 4.自分の健康状態を知るために、健康診断などは受けて、病気があっても早期に対応できるようにしましょう。重症になってしまっても、以前のような治療は受けられないかもしれません。
[4] 世界の指導者は明確なメッセージを国民に向けて発しています。
メルケル首相、最後の大晦日スピーチ「私たちはウイルスと戦う方法を知っています」をご紹介します。
ドイツでは、大晦日に首相が所信表明演説を行う伝統がある。そして、2021年の総選挙後に引退するメルケル首相にとっては、2020年の大晦日が最後のスピーチとなった。
毎年恒例のこのスピーチでは、通常は翌年の議題などが話されるが、昨年末のものはパンデミックに関する話題で埋め尽くされた。
メルケル首相は、コロナウイルスに感染して不幸に見舞われた人々に寄り添い、パンデミックに立ち向かう人々に感謝の意を表明すると同時に、15年間の首相生活の中で2020年が最も困難な年であったと述べ、国民に語りかけた。
親愛なる国民のみなさん
今年はなんという1年だったのでしょう!
2020年は全く予期せぬものに襲われた年でした。未知のウイルスが私たちの体や生活に入り込んできたのです。ウイルスは私たちの人間らしい行動にも入りこんできました。親密な接触、ハグ、会話、お祝いの場に、です。そして、通常の行動がリスクになり、不自然な予防措置が一般的なものになりました。2020年、パンデミックの年は学びの年でもありました。春に対応した際は知識も情報もあまりありませんでしたが、結果が正しく出ることを願って決断を下すしかありませんでした。
コロナパンデミックは、100年に一度の政治的、社会的、経済的な困難でした。これは歴史的な危機であり、私たち全員に多くのことが求められました。一部の人は非常に苦しい状況を受け止めなければいけませんでした。
この歴史的な危機に立ち向かうには、私たち皆が長い期間信頼しあい、忍耐を重ねて行かなければなりません。だからこそ、私はみなさんに心から感謝します。一方、この息をつくこともできない年の終わりに、私たちは立ち止まり、大きく息をし、死を弔うことが必要です。私たちは社会として、どれだけ多くの人が愛する人を失ったか、そして愛する人の最期の時にも寄り添うことができなかったかということを忘れてはいけません。
私にはその痛みを和らげることはできませんが、でも今夜、そんな人々に想いを馳せています。
コロナウイルスで最愛の人を亡くし、喪に服している人がどれほどの悲しみに暮れているのか、もしくはこの病気の後遺症に苦しむ人々がどれほど辛い思いをしているのか、私には想像することしかできません。
ウイルスの存在に異議を唱え、否定する人々がいます。しかし、陰謀論は間違っていて危険なだけでなく、ウイルスに苦しめられている人たちを侮辱し、苦しめるものです。2020年は心配と不確実性の年でした。しかし同時に、多くの人々が見返りも求めず、献身的に動いてくれた年でもありました。
まずは病院や老人ホームなどの施設で働く医師や看護師、介護職員です。そして、保健所の職員たちは、ウイルスとの戦いにおいて中心的な役割を担い続けています。また、我が国の軍隊は、必要な時に必要な場所で献身的に支援をしてくれました。
そして、パンデミックにもかかわらず、私たちの生活が成り立ったのは、数え切れないほどの人々のおかげです。スーパーマーケットや運送会社、郵便局、バスや電車、警察署、学校や保育園、教会、出版社などで働く人々が支えてくれました。
また、ほとんどの人がマスクをつけ、人と距離を保つというルールを守って行動してくれていることに感謝しています。このような態度が、人を大切にする社会の実現を可能にしているのだと思います。他者を思いやる心、一歩引くべき時を見定める力、公共心の表れです。
何百万人もの市民がこのような姿勢を取ってくれたことで、パンデミックをここまで乗り越えることができました。そして、このような態度は新しい年にも必要とされるでしょう。そのなかにあっても、私は希望を見出しています。ここ数日ですでにワクチンの接種が始まりました。まずは高齢者とその介護をする人々、集中治療にあたる医療従事者に対してです。このような動きはドイツだけではなく、ヨーロッパ全体、そして世界中で起きています。ワクチン接種数は日々増加しており、今後少しずつ、より広い年齢層や職業の人たちにも接種できるようになります。最終的にはワクチンを希望するすべての人が接種できるようになるでしょう。私も自分の番が来たら、ワクチンを接種するつもりです。
そして、もう一つ、私に希望を与えてくれるのは、世界中、特にドイツの科学者たちです。信頼性の高い最初のコロナウイルスの検査、そして世界の多くの地域で初めに承認されたワクチンもドイツで開発されました。
ワクチンはドイツ企業の研究から生まれたもので、現在はドイツとアメリカの協力で生産されています。創設者であるマインツのウグル・シャヒン氏とエズレム・テュレチ氏によると、同社では60ヵ国の人々が働いているそうです。ヨーロッパや国際的な協力、つまり多様性の力が進歩をもたらすということを示しています。
とはいえ、パンデミックによって、いまだ非常に困難な事態を突きつけられています。多くの企業経営者、従業員、フリーランス、アーティストが生活に対する不安を抱えています。その苦しい状況は彼らの責任ではなく、連邦政府はそのような人々を見捨てることはありません。政府による支援は過去に例を見ない規模に達しています。短時間労働給付金(パンデミックによって労働時間、賃金が減る従業員の給与を政府が補填する仕組み)の延長も施行されました。これらの措置によって雇用を守ることができます。では、新しい年の話題もすべてコロナウイルスについてでしょうか?違います。今年も話題は他にもありました。パンデミックの前から世界は急速にそして根本的に変化していたのです。そのため、ドイツは、未来のための大胆なアイディアを開発するために、エネルギーと創造性に焦点をあてることがますます求められています。
経済、移動、生活が気候に優しいものになるように。ドイツのすべての人々が同等の生活条件を得て、そして公平な教育機会から恩恵を受けるために。ヨーロッパ人である私たちが、グローバル化し、デジタル化した世界の中で、自分たちの力を発揮できるようにするために。みなさん、困難な日々はわが国においてしばらく続くでしょう。このパンデミックを今後どう乗り切るかは私たち次第です。大変な冬はまだ終わりません。私たちはウイルスと戦う方法を知っています。ワクチンの他に最も効果的なのは私たち自身の行動です。一人一人がルールを守ることです。私たち全員が共に。
最後に、個人的な話をします。9ヵ月後に連邦議会総選挙がありますが、私は立候補しません。そのため、今回が連邦首相としての最後の大晦日のスピーチになります。この年は、過去15年間で最も困難な年だったと言っても過言ではありません。そして不安や疑いはあるものの、これほどまでに願いを込めて新年を迎えたこともありません。
ここに、2021年の新年は、みなさんとご家族が健康で自信を持って過ごせ、幸あるものとなることを心よりお祈り申し上げます。
出所:クーリエ・ジャポン 【全訳】メルケル首相、最後の大晦日スピーチ「私たちはウイルスと戦う方法を知っています」
【全訳】メルケル首相、最後の大晦日スピーチ「私たちはウイルスと戦う方法を知っています」 | 感染で苦しむ人々に寄り添い、力を尽くした国民へ感謝を示す
(全訳引用元:松崎道幸先生)
[5] PCR検査が陰性でも注意すべき場合
明らかな濃厚接触や、発熱などの風邪症状がある場合、PCRが陰性でも、新型コロナ感染の可能性を完全否定はできません。
少なくとも1週間(保健所から指示あれば2週間)はステイホームしましょう。
図7:新型コロナ感染が認められた場合に、PCR陰性になる確率
縦軸はPCRの偽陰性率(本当は感染しているのに、PCRでは陰性と判定される核率)です。
①感染3日目までは、偽陰性率100%近く、つまりほとんど陽性になりません。
②感染5日目から12日目までは偽陰性率は20-30%です。つまり正しく陽性と判定されるのは70-80%までです
次のグラフは、症状のあるなしに関わらず最初にPCR陰性と判断されたときに、本当は陽性である確率です。Pretest probabilityはその地域のPCR陽性率です。ちなみに、最近は東京・大阪ともにPCR検査を受けた人の10.5%が陽性と判定しているので、グラフの11%の破線が当てはまります。
グラフから読み取ると、矢印の感染後(濃厚接触後)5日から12日目の間では、PCR検査を受けて陰性でも約5%の人が本当は陽性である可能性があるとわかります。
図8:最初にPCR陰性と判断されたときに、本当は陽性である確率
ですから濃厚接触者と判定されると、PCRが陰性でも本当は陽性である可能性が否定できないので、感染性のほぼ無くなる最低7日間(保健所の指示は14日間)は自宅待機が必要になります。
出所:Ann Intern Med. 2020 Aug 18;173(4):262-267.
Variation in False-Negative Rate of Reverse Transcriptase Polymerase Chain Reaction-Based SARS-CoV-2 Tests by Time Since Exposure
https://www.acpjournals.org/doi/10.7326/m20-1495
[6] 中国の超集中的PCRスクリーニング検査:1週間で1000万人分以上検査終了
中国本土では昨年10月に、約2か月ぶりに、3人の陽性者が発見されました。その後の5日間で1000万人以上のPCR検査を行ったとのことです。中国の医療体制の充実ぶりが示された事例でした。
中国の青島の10月11日に3人の新型コロナ患者が発見された。直ちに訓練された医療チームが立ち上げられ、青島市とその周辺に4090か所の検査センターを設けた。
PCR検査はプール法で行い、濃厚接触者は3人分を1つに、入院患者や医療関係者は5人分を1つに、その他の人は10人分を1つにまとめて検査し、陽性の場合には各個人の検体を再検査した。
10月16日にまでには合計1090万人を検査して、他に9名の陽性者を発見した。11月までには全検査を完了した。
出所:Rapid Response to an Outbreak in Qingdao, China
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMc2032361
[7] 新型コロナが普通の風邪になるまでには、10年
先日のニュースよりご紹介します。
新型コロナウイルス感染症は、通常の風邪を引き起こす既存の4種類のヒトコロナウイルスのように定着するまでに10年程度かかるとの試算を、米エモリー大などの研究チームがまとめた。10年後には3~5歳程度でほとんどの人が感染し、高齢になって感染しても重症化を防ぐ免疫を得られるため、死亡率は低下し、インフルエンザを下回る可能性があるという。
研究チームは、4種のヒトコロナウイルスと同様の特性を新型コロナも持つと仮定。若いうちに感染すると軽症で済み、再度感染しても重症化しにくいと考えた。現在、世界的に重症者が相次ぎ死者も増えているのは、高齢になってから初めて感染していることが主な要因という。
その上で新型コロナについて、1人の感染者が免疫のない人の集団で平均何人に感染させるかを示す「基本再生産数」(R0)や、4種のコロナウイルスのデータを加味し、将来のシナリオを試算した。その結果、R0を2とした場合、3・4~5・1歳でほとんどの人が感染する状況になるのに10年かかることが明らかになった。小児は重症度が低いため、ワクチン接種も不要になる可能性があるという。
一方、R0を4とすると2年半程度で小児期の感染症に移行・定着する。R0の値に関わらず、定着後は死亡率が劇的に低下し、季節性インフルエンザの約0・1%よりも低くなる可能性があるという。
世界保健機関(WHO)は新型コロナのR0を1・4~2・5と推定。それ以上とする報告もある。
研究チームは「MERSのように小児で重症度が高ければワクチンが必要だが、新型コロナはそうではない。
ただし、社会的な距離を保つこととワクチンは、移行・定着までは重要な対策だ」としている。
出所:ヤフーニュース 毎日新聞「新型コロナ、10年後は普通の風邪 米大学研究チームが試算」1/18(月)
https://news.yahoo.co.jp/articles/2da4c481124c82318c9e68c61d886b114ed0f39d
このニュースの原著は下記のサイエンス誌の論文です。詳しく解説します。
図9:感染した後に死亡する率(IFR)と感染時年齢、経過時間による推移
Aは、縦軸が感染した後に死亡する率(IFR: Infection Fatality Ratio)、横軸はかかった年齢です。
赤線の新型コロナ感染症(CoV-2)は60歳前後から死亡率がやや上昇しますが、80歳でも5%程度です。
その他のMERS(緑線)やSARS(CoV-1:青線)の方が、感染後死亡率が高いことが分かります。
Bの一番上の図が新型コロナ感染症(CoV-2)で縦軸が感染した後に死亡する率(IFR: Infection Fatality Ratio)、横軸はこれから何年後(10年後まで)を示しています。
WHOが推定しているように、1人の感染者が免疫のない人の集団で平均何人に感染させるかを示す「基本再生産数」(R0)が2前後であれば赤い実線のグラフのように10年後にはIFRは0.001、つまり感染後の死亡率が0.1%というような病気になっていると計算されました。
ちなみに最下段の図のMERSでは10年後のIFRは0.37であり、つまり感染後死亡率は3人に1人以上ということになります。
注意すべきこととしてIFRは感染した自覚症状もなく病院でも診断されていない感染者を含みます。
そのため抗体検査などで知らないうちに感染して治癒してしまった、どちらかというと大多数の人の数も含めて、死亡率を出します。
第1章の当院の抗体検査の陽性率データのように、東京近くでは5%の人が感染している可能があり、これは検査で陽性と判明した人の8-10倍近くになるので、やはり未診断の人が大多数であることが分かります。
診断後死亡率(CFR: Case Fatality Ratio)はPCRやその他の検査で陽性と診断された人の死亡率ですが、日本は下記の表のように1.4%です。IFRはCFRよりかなり低くなります。
1月14日の時点の東京都の合計死者数は707名でした。
東京都のCFRを計算すると、707/90659 (0.78%)です。若年者が多いので日本の平均より死亡率が減った可能性があります。
抗体検査結果から概算で算出した東京都の感染者数を70万人とすると、IFRは707/700000で0.1%です。
表1:2021年1月21日時点の死亡者統計(人口10万人当たりの死者数の多い順)
出所:Science Immunological characteristics govern the transition of COVID-19 to endemicity
https://science.sciencemag.org/content/early/2021/01/11/science.abe6522.full
[8] 今、ワクチンが必要な理由
感染しただけでは、終生免疫がすぐに得られるわけではありません。
つまり終生免疫のためには今はワクチンが必要です。
ブラジルのマナウス州では新型コロナ感染症が猛威をふるいました。
研究者らが採血検体の抗体陽性率を調べたところ、なんと6月終わりには66%が陽性、10月には76%が陽性となり、人口の4人のうち3人がすでに新型コロナウイルスに感染したということが分かりました。
下記の図Aの実線のグラフの左の縦軸は抗体陽性率(0-100%)、横軸は時間(2020年2月から2020年11月)、右の縦軸は10万人当たりの日々の死亡者数です。
上記の人口10万人当たりの合計死亡者数ではないことに注意してください。
その次の図Bのグラフが各国(英国、米国、ブラジル、日本)の人口10万人当たりの日々の新規の死亡者数のグラフです。
Aではまず5月ごろから抗体陽性率が急上昇し、7月から11月まで(赤丸の間)では抗体陽性率が75%にまで上昇。
ほとんどの人が感染したことが分かります。
ではその間の日々の新規死亡者数は、矢印の期間の小さな棒グラフが示すように、10万人当たり毎日0.3人はいたように思えます。
これはBのグラフのブラジル全体の10万人当たりの新規死亡者数の、同時期の記録と不変です。
つまり、人口の大多数が感染しても、感染による死亡が大きく減ってくるわけでもなく、すぐには集団免疫が達成されたわけではなさそうということです。
実際に当クリニックの抗体陽性者をみても、抗体価がかなり低い人も多く、このような人は再感染してもおかしくないと考えますし、またコロナの遺伝子変異もそれに加わって影響を持つかもしれません。
少なくとも言えるのは、効果あるワクチンがやはり必要であり、もしかすると複数回の接種が必要かもしれないということになりそうです。
図10:ブラジル・マナウスでのSARS-CoV-2抗体有病率の推定値
図11:人口10万人当たりの1日の新型コロナ感染症による新規の死亡者数
出所:下記2件の論文はいずれもSciensceより
Three-quarters attack rate of SARS-CoV-2 in the Brazilian Amazon during a largely unmitigated epidemic.
L. F. Buss et al., Science 371, 288 (2021). *グラフ3含む
https://science.sciencemag.org/content/371/6526/288
Herd immunity by infection is not an option
https://science.sciencemag.org/content/371/6526/230.full
*グラフ4
https://www.ft.com/content/a2901ce8-5eb7-4633-b89c-cbdf5b386938
[9] ワクチン接種の効果について:イスラエル”ワクチン2週間超”で感染者減
ワクチン接種に関して、全世界で最も先行するイスラエルの事例です。
新型コロナウイルスのワクチン接種が世界最速のペースで進むイスラエルで12日、接種から2週間を超えた人は、2週間以内の人と比べ、感染者数が少ないことが報告されました。
イスラエルでは先月下旬にワクチンの接種が始まり、地元メディアによると、これまでに人口の2割を超える188万人あまりが1回目の接種を済ませています。
こうした中、保健省が12日、ワクチン接種に関する暫定数値を発表しました。
接種から7日以内に感染が確認されたのが4484人、8日から14日以内が3186人だったのに対し、15日から22日経過した人では、感染者数は353人だったということです。
また、ワクチン接種後に入院した人は375人でしたが、そのうち、接種から2週間を超えている人は7人だったとしています。
つまり、接種後2週間するとワクチン効果が見られるということであり、以前にファイザー社などがFDAに提出した成績とほぼ同様です。
副反応については、頭痛や発熱などのほか、顔面神経まひが14例、けいれんが5例報告されているということです。
出所:ヤフーニュース「イスラエル”ワクチン2週間超”で感染者減」日本テレビ系(NNN)1/13(水)
https://news.yahoo.co.jp/articles/371c1c1e6b99b87466c73bddc981f408169df753
[10]世界のワクチン接種率(2021年1月20日)
棒グラフの中の数字が接種率です。イスラエルや中東がトップです。
図12:世界のワクチン接種状況
出所:FINACIAL TIMES Covid-19 vaccine tracker: the global race to vaccinatehttps://ig.ft.com/coronavirus-vaccine-tracker/
[11]モデルナワクチン、ファイザーワクチンの副作用報告
1)モデルナ社のワクチン
米国で2020年12月21日から2021年1月10日までの間に、4,041,396人に対してモデルナ社のワクチン第一回目が接種された。10名にアナフィラキシーショックを認め、9名は15分以内に発症した。アナフィラキシーショックによる死亡はなかった。アナフィラキシー以外の急性症状は43例であった。
表2:モデルナワクチンの初回投与を受けた後に報告されたアナフィラキシーの症例の特徴
表3:モデルナワクチンの初回投与を受けた後にアナフィラキシーおよびアナフィラキシー以外の反応が報告された患者の特徴
出所:https://www.cdc.gov/mmwr/volumes/70/wr/mm7004e1.htm
2)ファイザー社のワクチン
2020年12月14日から12月23日に、ファイザー社のワクチンの第1回目の接種を受けたのは1,893,360名であった。アナフィラキシー症状を呈したのは21名で、4名が入院し17名は救急外来で加療された。死亡例はなかった。女性はうち19名であった。
図13:ファイザーワクチン後のアナフィラキシーの症例の特徴
出所:JAMA Insights Clinical Update
January 21, 2021
Allergic Reactions Including Anaphylaxis After Receipt of the First Dose of Pfizer-BioNTech COVID-19 Vaccine
https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2775646?
fbclid=IwAR2DWKZvYzvOKS7nFMls-wmeJHcINAxRGiO6cdX_f1-nc4mTCbohS19a2Dc
※当ページの内容は「2021年1月27日」時点の情報です。