学術業績

国際閉経学会第19回世界会議のポスターセッションにて、吉形玲美医師がエクオール産生能の優位性およびエクオール産生能検査の有用性研究成果について発表しました

吉形医師の写真

当医療法人社団ミッドタウンクリニック特別顧問(女性医療研究主幹)であり、産婦人科専門医の吉形玲美医師は、2024年10月19日~21日にオーストラリア・メルボルンで開催された国際閉経学会第19回世界会議のポスターセッションにて、エクオール産生能の優位性およびエクオール産生能検査の有用性研究成果について発表しました。

吉形玲美医師 発表内容

男女のエクオール産生者の健康上メリットとの関係

【研究背景と目的】

これまでの継続的な研究により、エクオール産生者の健康的な優位性や、エクオールの作用が明らかになっています。本研究では、男女のエクオール産生者と非産生者の各検査結果の比較検討から、エクオール産生能の健康上のメリットとの関係を考察しました。

【結果】

前立腺がんのリスク指標であるPSAがエクオール産生者で有意に低く、前立腺疾患リスクの低減が期待できます。一般にエクオールで知られているメカニズムから、ジヒドロテストステロン(DHT)産生の抑制効果によりPSAが低くなるものと考えられます。ジヒドロテストステロン(DHT)の産生抑制は、男性型脱毛の抑制にも関連しています。

PSA(前立腺特異抗原)とジヒドロテストステロン(DHT)

PSAは前立腺細胞から分泌されるたんぱく質。血液中のPSA値が高いと前立腺がんのリスクが高くなります。ジヒドロテストステロン(DHT)は男性ホルモンであるテストステロンから変換された活性型のホルモン。ジヒドロテストステロンは産生過剰になるとPSA値を高める要因となり、前立腺がんのリスクを高めるほか、脱毛を促進します。

【男女ともに生活習慣病への好影響】

エクオール産生能のある男性では、LDLコレステロールが有意に低く、女性では、LDLコレステロール、中性脂肪、尿酸が低いという優位性が示されました。

これらは、一般にエクオールで知られているメカニズムから、肝臓での脂質合成の抑制作用、抗動脈硬化作用による腎血流改善の効果によるものと考えられます。このほか、エクオールは強い抗酸化作用を有することや、血管壁へは一酸化窒素NOの産生による直接的な抗動脈硬化作用もあることから、男女とも各種生活習慣病への好影響が期待されます。

  • 論文
    「日本人男女466 人を対象とした LC-MS/MS 法によるエクオールの血中および尿中濃度の比較とエクオール産 生に関連する因子の検討」

    Comparison of blood and urine concentrations of equol by LC–MS/MS method and factors associated with equol production in 466 Japanese men and women(『PLOS ONE』2024 年 3 月 21 日/吉形玲美、キン ゼッヤーミン〈Khin Zay Yar Myint〉、田口淳一)

    「エクオール産生者の5つの異なる定義の比較:466人の健康な男性および女性における血液と尿中のエクオール 濃度と血液パラメータとの関係」Comparison of the five different definitions of equol producers: The relationship between blood and urine equol concentrations and blood parameters in 466 healthy men and women(『 Clinica Chimica Acta』557 号 2024 年/キン ゼッヤーミン〈Khin Zay Yar Myint〉、 吉形玲美、田口淳一)
  • ハイメディック検診の検診データ
    22歳から88歳までの健康な男女466人(男性292人、女性174人)
    2016年6月から2017年12月まで
    *本研究に同意をいただいた方の検診データを使用

世界に通じる、エクオールの有効性

吉形医師は学会を終えて、以下のようにしめくくりました。

「ポスター発表では、タイ、台湾などアジア各国や、イタリア、オーストラリアの医師たちがセッションに訪れエクオールの重要性を説明しました。エクオールという代謝産物自体を知らない医師がほとんどで、体内動態のこと、エストロゲンと似た構造をもっていること、男女ともにエクオールによる健康増進効果が認められること、などを説明しました。各国ともエクオールへの関心は高く、特に大豆食品が身近ではない国々からエクオールサプリメントへの期待が寄せられました。大豆食品や発酵食品が身近にありエクオールについてもだいぶ浸透している日本とは大きな差を感じるとともに、エクオールサプリメントの普及はグローバルに求められていることだと改めて実感しました。」

※当ページの内容は「2024年11月14日」時点の情報です。