学術業績
東京ミッドタウン皮膚科形成外科Noage院長 上島医師が、「トリコスコピー像から判明した男性型脱毛症と女性型脱毛症の進行経路の違い」を発表
東京ミッドタウン皮膚科形成外科 Noage(ノアージュ)院長 上島朋子医師による「トリコスコピー像から判明した男性型脱毛症と女性型脱毛症の進行経路の違い」が、美容皮膚・ヒト臨床ジャーナル「Journal of Cosmetic Dermatology (JCD)」2024年1月号に掲載されました。
- 従来、男性型脱毛症(MAGA)と女性型脱毛症(FPHL)は、同様の経過をたどり進行するといわれてきた。また、男女の違いを含めてトリコスコピー(毛や毛包周囲を拡大鏡によって診断する方法)による男女比較が充分なされてこなかったため、有効な治療法を選択するのが困難であった。
- 本臨床研究の結果、男性型脱毛症と女性型脱毛症の進行経路には違いがあることが明らかになった。これにより、男性型脱毛症と女性型脱毛症の進行要因に関する新たな仮説が立てられ、新規治療法の開発に役立つ可能性が見えてきた 。特に、個々の患者に対する治療法の選択において、これらの進行経路の違いを考慮し、従来の一律的な治療法とは異なるアプローチが必要であることがわかった。
- 本臨床研究の論文が美容皮膚・ヒト臨床学術ジャーナル「Journal of Cosmetic Dermatology (JCD)」2024年1月号に掲載※1。 (https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/jocd.16177)
※1 論文タイトル: Divergent progression pathways in male androgenetic alopecia and female pattern hair loss: Trichoscopic perspectives
【研究目的】
本研究の目的は、男性型脱毛症(MAGA)と女性型脱毛症(FPHL)の性差による特徴を調べると同時に、臨床段階におけるこれらの病態の進行程度を明らかにすることです。
【研究背景と方法】
これまで、トリコスコピー(毛や毛包周囲を拡大鏡によって診断する方法)による男女比較が充分なされてこなかったため、有効な治療法を選択することが困難でした 。本研究では、男性型脱毛症126例と女性型脱毛症57例を対象として、9つの定量的トリコスコピー因子を詳細に分析しました。
【結果】
9つの定量的トリコスコピー因子のうち、毛髪直径と1毛包あたりの毛髪数は男女ともに脱毛症進行度と強い相関を示しました。脱毛評価のために従来使われてきた毛髪密度は、女性型脱毛症では臨床病期との相関が弱く、男性型脱毛症では全く相関が見られませんでした。
加えて、男性型脱毛症では毛髪直径の段階的な減少で始まり、次いで毛包あたりの毛髪数が減少するという特徴がありました。一方、女性型脱毛症では逆の進行経過がみられました。
【研究総括】
本臨床研究から、脱毛症の進行度に応じて見られる定量的トリコスコピー因子の変化は男女で異なることが判明しました。
進行の経路は、
- 経路1:毛髪直径の減少に反映される毛包の小型化
- 経路2:1毛包あたりの毛髪数の減少に反映される毛包周囲微小環境の機能障害
があり、男性型脱毛症(MAGA)は経路1 から経路2 へと進行しますが、女性型脱毛症(FPHL)は経路2 から始まり、経路1 へと進行していました。
本研究による知見は、男性型脱毛症と女性型脱毛症の治療法の開発に役立つ可能性があるとともに、患者個々人に対する治療法の選択にも有用であると考えられます。
MAGA(男性型脱毛症)とFPHL(女性型脱毛症)における異なる進行経路。
FU…毛包単位あたりの単毛 APM…毛乳頭筋
上島朋子医師 Journal of Cosmetic Dermatology (JCD) 論文掲載より
<参考情報:試験方法>
- 対象者:
- 日本人男性脱毛症患者様126名(頂部脱毛)/日本人女性脱毛症患者様57名(前頭部~頭頂部脱毛)※
※東京ミッドタウン皮膚科形成外科Noage(ノアージュ)受診患者様 - 試験期間:
- 2021年3月から2023年4月までの2年間
- 使用した統計解析:
- Spearmanの順位相関係数を用いて、各臨床病期間の9QTF の差の統計的有意性を評価。続いて、Mann-Whitney U 検定を用いて、病期間、病期群間、若年、中年、高齢の各年齢群間において、選択したトリコスコピー値を比較。すべての統計値はp値<0.05で統計的に有意とみなされた。
>>本研究について詳しくはプレスリリースをご覧ください
https://www.amcare.co.jp/news/uploads/PR_release_kamishima_amc20240220.pdf
※当ページの内容は「2024年2月20日」時点の情報です。