審美歯科の可能性

今回のコラムは、審美歯科の可能性についての話をさせて頂こうと思います。

私は、大阪大学歯学部第一補綴学講座で約7年間、米国Loma Linda University Implant Dentistry で約4年間、審美歯科についての臨床と研究を行ってまいりました。

大阪大学では、臨床の分野で私の最初の師匠である六人部慶彦先生(当時大阪大学助教、現大阪府大阪市北区開業)にご指導して頂きました。

研究の分野では、審美歯科材料(セラミックスやコンポジットレジン)の分野で中村隆志先生(現大阪大学准教授)のご指導の元、歯学博士の学位を取得し、その後も研究を続けておりました。

前回のコラムで書かせて頂いたように Loma Linda University では Dr.Joseph Kan の元で、審美インプラント歯科の臨床と研究を行ってまいりました。

このように私の歯科医師人生の中で、審美歯科は常に中核をしめております。

私がなぜここまで、審美歯科にこだわりを持って治療や研究を続けているかというと、ある一人の患者さんとの出会いが大きかったと思います。

私が大阪大学歯学部附属病院に勤務していた頃、口元に劣等感を持たれていた女性の患者さんが来院されました。その患者さんの全ての前歯には古いかぶせものが装着されており、黄色く変色していました。また、それらはご自身の歯ではないことがすぐに分かるくらい不自然な状態でした。その影響からか、その方は話をされる時には常に口元を隠されていました。

私の治療は、古いかぶせものを新しくするだけではなく、より本来あった状態(ご自身の口元の状態とかぶせものがより自然に調和した状態)に近づけ、より機能的(バランスよく、全ての歯で咬め、食事が出来、発音が出来ること)に回復を行い、そしてその状態を長い間維持することを治療の最終目標として行っております。よって、術前の診査診断は大変重要なことと考えております。また、治療の説明も十分に行います。治療内容を十分にご理解して頂くことも治療のひとつだと考えるためです。

この患者さんの全ての治療が終わった後、術前と術後の写真を比較すると、唇を含めた口元の動きが大きく変わっていました。歯がきれいになったことで、よく笑うようになり、唇の位置と形、口元の筋肉の動きが変わったのです。またその影響で、表情全体が変わり、ご友人の方々からも若々しくなったと言われるようになったとのことでした。

治療前治療後









この患者さんとの出会いから、審美歯科治療は歯をきれいにするだけではなく、人生をより豊かにすることが出来る可能性があることに改めて気がつかされたのです。


ありがたいことにこの患者さんは、今でも毎年感謝の手紙を送ってきて下さります。私がアメリカに滞在していた間でさえ、送ってきて下さっていました。歯科医師として、これほど嬉しいことはありません。

一般的に、口の中の状態は、年齢とともに審美的にも機能的にも低下していくと考えられていると思います。しかし「歳だから」と全てをあきらめないで下さい。その低下してしまった状態から回復することは可能です。そして、その低下をなだらかな状態にしていくことも可能なのです。

また、以前に歯科治療を受け、口元が不自然になってしまったと悩まれている方もいらっしゃるかもしれません。「すでに自分の歯を失ってしまったのだから」とあきらめないで下さい。より自然な状態に回復することは可能なのです。ぜひ一度相談してみて下さい。

これからも患者さんとの出会いを楽しみにしています。そして、一人でも多くの患者さんに、口元に自信を持って頂き、人生を豊かに健やかに過ごして頂くお手伝いが出来れば嬉しく思います。

今後ともよろしくお願い致します。

歯科医師、歯学博士、日本歯科審美学会認定医
脇 智典